エラーメッセージの読み方

エンジニアの日常において、エラーメッセージとの遭遇は避けられません。しかし、これを正しく読み解くスキルは、効率的なデバッグや問題解決のカギとなります。エラーに対する不安を乗り越え、自身のスキルセットを高める一歩を踏み出しましょう。

エラーメッセージとは

エラーメッセージの役割

エラーメッセージは、プログラムやシステムが予期せぬ動作を行った際に、何が問題であるかをユーザーや開発者に示す情報です。このメッセージは、システムの異常動作、問題の発生箇所、そして原因などを指摘するものであり、適切な対処やデバッグを行うための重要な手がかりとなります。

以下は、TypeScriptでの型の不整合が起こった際のエラーメッセージの例です。

const num: number = "hello";  // エラー

エラーメッセージ:

Type '"hello"' is not assignable to type 'number'.

このメッセージは、文字列 "hello" が数値型には割り当てられないと警告しています。エラーメッセージを適切に読むことで、開発者はコード上の型の不整合を速やかに特定し、修正することができます。

エラーとバグの違い

エラーとバグは、しばしば同じ意味で使われることがありますが、厳密には以下のような違いが存在します。

  • エラー (Error): プログラムの実行中に発生する予期しない問題。これには、コンパイルエラーやランタイムエラーなどが含まれます。エラーは多くの場合、明確なメッセージとともにプログラムの実行を中断します。

  • バグ (Bug): プログラムが意図しない動作や不具合を示す時。エラーメッセージが必ずしも出るわけではありませんが、プログラムの動作や出力が期待と異なる場合に発生します。

エラーメッセージの構造

基本的なエラーメッセージの構成

エラーメッセージは、プログラムの実行中に何らかの問題が生じた際に、その原因や詳細を開発者に伝えるための情報を含んでいます。TypeScriptのエラーメッセージは、以下のような基本構造を持っています。

  1. エラーが発生したファイルや行番号

  2. エラーコード

  3. エラーメッセージ

: 考えられるエラーを含むTypeScriptのコードを以下に示します。

const value: number = "hello";  // 型の不整合

エラーメッセージ:

sample.ts(1,14): error TS2322: Type '"hello"' is not assignable to type 'number'.

このエラーメッセージには、

  • ファイル名 sample.ts とその1行目

  • エラーコード TS2322

  • エラーメッセージ本文 Type '"hello"' is not assignable to type 'number'. が含まれています。

ステータスコード、エラーコード、エラーメッセージの違い

  1. ステータスコード: 主にWebの応答コードとして用いられるもので、例えばHTTPステータスコード (200, 404, 500など) がこれに該当します。通信の結果や状態を示します。

  2. エラーコード: 一般的なソフトウェアや言語がエラーを示す際に用いる独自のコードです。このコードを通じて、エラーの種類やカテゴリを特定することができます。上記の例では TS2322 がエラーコードです。

  3. エラーメッセージ: エラーの詳細や原因を人が理解しやすい形で示すテキストです。これにより、開発者は具体的な問題を理解し、修正を行うことができます。

実例を使ったエラーメッセージの読み解き

代表的なエラーメッセージの事例とその解析

  1. 型の不整合

const age: number = "twenty"; 

エラーメッセージ:

error TS2322: Type '"twenty"' is not assignable to type 'number'.

解析:

  • 発生場所: エラーが発生したのはageの変数宣言部分。

  • 原因: 文字列 "twenty" が、number型の変数 age に割り当てられている。

  • 対策: 適切な数値に変更するか、変数の型を string に変更する。

  1. 未宣言の変数の使用

const result = unknownVar + 10;

エラーメッセージ:

error TS2304: Cannot find name 'unknownVar'.

解析:

  • 発生場所: unknownVarの使用部分。

  • 原因: unknownVarが宣言されていない。

  • 対策: 正しい変数名に修正するか、未宣言の変数を宣言する。

エラーメッセージによって異なるアプローチの紹介

  1. 型関連のエラー:エラーメッセージに「assignable」や「type」などのキーワードが含まれている場合、変数や関数の引数・返り値の型が不整合である可能性が高い。対応として、関連する型を見直して修正する。

  2. スコープ・宣言関連のエラー:「Cannot find name」や「is not defined」などのエラーメッセージは、未宣言の変数や関数、またはスコープ外の変数・関数を参照している場合に発生する。対応として、正しい名前を使用するか、適切な場所での宣言・インポートを確認する。

  3. プロパティ・メソッド関連のエラー:「has no property」や「is not a function」といったエラーメッセージは、オブジェクトのプロパティやメソッドの不整合を示す。対応として、オブジェクトの型やクラスの定義を見直して修正する。

よくあるエラーメッセージのタイプとその対処法

シンタックスエラー

  • コードの書き方に関する基本的なルールを守っていないために発生するエラー。

const name = "Alice

エラーメッセージ:

error TS1002: Unterminated string literal.
  • 対処法: エラーメッセージを参考に、文字列リテラルを正しく終了させる。

ランタイムエラー

  • コードの実行中に発生するエラー。シンタックス自体は正しいが、実行時に問題が生じた場合に発生。

const numbers = [1, 2, 3];
const value = numbers[5];

エラーメッセージ:

undefined
  • 対処法: 配列の範囲を超えてアクセスしようとしているので、インデックスの値を正しく修正する。

論理エラー

  • コードが期待した動作をしないが、エラーメッセージは表示されない場合。

const areaOfCircle = (radius: number) => {
    return 2 * Math.PI * radius;  // Should be πr^2
};
  • 対処法: アルゴリズムや式を見直し、正しい計算を行うようにコードを修正する。

依存関係のエラーや外部リソースの接続エラー等の対処法

  • 外部のライブラリやモジュール、データベースなどとの連携時に発生するエラー。

import { NonExistentFunction } from "some-library";

エラーメッセージ:

error TS2305: Module '"some-library"' has no exported member 'NonExistentFunction'.
  • 対処法:

    1. 使用しているライブラリやモジュールのドキュメントを参照し、適切な関数やクラスをインポートする。

    2. 依存関係を確認し、必要なライブラリやモジュールが適切にインストールされているかを確認する。

    3. 接続エラーの場合、接続先のリソースの状態や認証情報などを確認する。

エラーメッセージが不明瞭な場合の対処法

エラーメッセージが曖昧、または不足しているケース

  • ときどき、エラーメッセージは発生した問題を具体的に示さないか、完全には明らかでない情報しか提供しない場合があります。

const values: any = {};
const result = values.unknownProperty.toUpperCase();

エラーメッセージ:

error: Cannot read property 'toUpperCase' of undefined

このエラーメッセージだけでは、どのプロパティが問題なのか具体的にはわかりません。

スタックトレースの見方

スタックトレース(またはスタックバックトレース)は、プログラムがエラーを発生させた際に表示される、そのエラーが発生するまでの関数やメソッドの呼び出し履歴です。これにより、エラーが発生した具体的な位置や、その原因となるコードの流れを特定しやすくなります。

具体的には、スタックトレースはエラーが発生した時点でのコールスタックの内容を示しています。コールスタックとは、プログラムが関数やメソッドを呼び出す際に、それらの呼び出し情報を積み上げて保持するスタックのことを指します。

const functionA = () => {
    functionB();
}

const functionB = () => {
    functionC();
}

const functionC = () => {
    throw new Error("An error occurred in functionC");
}

functionA();

上記のコードでは、functionAから順に関数が呼び出され、functionCでエラーがスローされます。この際のスタックトレースは、以下のように表示されることが多いです。

Error: An error occurred in functionC
    at functionC (path/to/file.ts:line:column)
    at functionB (path/to/file.ts:line:column)
    at functionA (path/to/file.ts:line:column)
    at Object.<anonymous> (path/to/file.ts:line:column)

このスタックトレースを見ると、エラーはfunctionC内で発生し、その関数はfunctionBから、さらにその前はfunctionAから呼び出されていることがわかります。

スタックトレースはデバッグの際に非常に役立つツールとなります。エラーの原因や影響範囲を特定する際の重要な手がかりとなるため、エンジニアはスタックトレースの読み方や理解をしっかりと身につけることが必要です。

エラーメッセージを検索する技術

エラーが発生したとき、スタックトレースやエラーメッセージを見ても原因が直ちに分からない場合があります。このような場合、エラーメッセージを検索する技術を活用することで、迅速に解決策を見つけることができます。

有効なキーワードの選択

エラーメッセージをそのまま検索エンジンに入力することも一つの方法ですが、具体的な変数名やファイルパスなどの特有の情報は除外して、共通のエラーメッセージの部分だけを取り出して検索すると、より有効な結果が得られます。

const num: number = "123";

このコードはTypeScriptでコンパイルエラーになります。エラーメッセージは以下のようになります。

Type '"123"' is not assignable to type 'number'.

この場合、検索するときには "is not assignable to type" などの部分をキーワードとして使用すると良いでしょう。

オンラインリソースやドキュメントの活用方法

  • 公式ドキュメント: エラーが言語の基本的な部分に関連している場合、公式のドキュメントに答えが載っていることが多いです。

  • 技術ブログや記事: よくあるエラーや罠に関する情報は、他のエンジニアがブログや記事にまとめていることがよくあります。

コミュニティやフォーラムでの質問の仕方

  • 質問の際の情報の整理: エラーメッセージ、使用しているツールやライブラリのバージョン、発生した状況や手順など、詳細な情報を提供することで、他の人が問題を理解しやすくなります。

  • 再現性: エラーを再現する最小のコードを共有することで、他の人が問題を手元で確認しやすくなります。

  • 適切なタグの使用: Stack Overflowなどのサイトでは、タグをつけて質問をカテゴライズすることができます。適切なタグを使用することで、専門家が質問に答えやすくなります。

エラーへの正しい対応姿勢

プログラムの開発中にエラーが発生するのは当然のことです。エラーメッセージの読み方を理解することは大切ですが、それだけでなく、エラーに対する正しい対応姿勢も重要です。

パニックにならず冷静に対処する方法

エラーは学びの機会: エラーは悪いことではありません。それは学ぶ機会であり、ソフトウェアの品質を向上させるためのフィードバックです。

一息つく: エラーを見た瞬間に解決しようと焦ると、より多くのミスをすることがあります。一旦深呼吸し、冷静に状況を確認することが大切です。

エラーを経験として活かす方法

ドキュメンテーション: エラーとその解決方法をドキュメントにまとめることで、同じ問題に再度直面したときや、チームメンバーが同じ問題に遭遇したときに迅速に対処できます。

レビューと共有: エラーとその原因、解決策をチームで共有することで、チーム全体のスキルが向上します。

エラーを再現・解析する際の基本的なステップ

  1. エラーの再現: エラーを再現できる最小のコードや手順を確認します。

    :

    const age: number = "25"; // Type '"25"' is not assignable to type 'number'.
  2. エラーメッセージの確認: エラーメッセージを注意深く読み、何が問題であるかを理解します。

  3. 仮説の設定: エラーの原因についての仮説を立てます。上記のエラーであれば、文字列を数値の型変数に代入しようとしたためエラーが発生したという仮説を立てることができます。

  4. 修正と検証: 仮説に基づいてコードを修正し、エラーが解消されるかを検証します。

    const age: number = 25; // 修正後
  5. 反省と学び: なぜそのようなエラーが発生したのか、どのようにしてそれを防ぐことができるのかを考え、学びとして活かします。

エラーに遭遇したときの対応姿勢やその対処方法は、エンジニアとしてのスキルや経験を向上させるための大切な要素です。エラーを恐れず、それを学びの機会として捉えることで、より成熟したエンジニアになることができます。

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